生物個体が一生涯の間に行う一連の生命活動を「生活史」といいます。 植物の生活史は、種子から発芽し、幼植物として定着・成長し、その後開花して種子を生産して次世代を残す、という流れで一般的に構成されます。 生活史の進み方は種によって大きく異なっており、一年で一生を全うする一年生植物もいれば、何十年・何百年と長生きする多年生植物もいます。 また、生育環境に応じて、成長が早まったり、途中で死亡しやすくなったり、種子の生産数が増えたりなど、同じ種であっても生活史の流れに変化が生じます。 当研究室は、農地・森林・草地・公園などの緑地に生育する植物を対象に、生活史に関する生態学・進化生物学の研究に取り組んでいます。
人間による土地開発や環境汚染は生物多様性を脅かす主要因の一つです。
これらの人為かく乱は、若い生育段階の死亡率を上げたり、種子生産数を減少させたりなど、生活史の様々な過程に影響を及ぼします。
各過程に生じた影響は組み合わさって生物個体に作用し、個体群の存続可能性や群集の種多様性へと、影響が波及していきます。
当研究室は、人為かく乱下の野生生物の生活史を調べることで、人間が生物多様性や生態系に与える影響のメカニズム解明に取り組んでいます。
生活史調査は、個体を経時的にモニタリングして、いつ・どの程度繁殖・死亡するのかを観測するという地道なアプローチですが、
個体数や遺伝的多様性、種多様性を予測するために必要な情報を提供してくれます。
調査を通じて得られた生活史情報を基に、長期的な個体群・群集の将来予測や保全管理の検討など、生物多様性を巡る課題解決に挑んでいます。
人間は生物多様性や生態系を脅かす一方で、植栽や鑑賞物、特産品など様々な用途で植物を利用し、経済的・文化的恩恵を享受しています。 当研究室は、植物がもたらす生態系サービス・NCP (Nature's Contibution to People)に着目して、人間社会にとっての生物多様性の価値や社会-生態系の関連の解明にも挑んでいます。 人間社会と生物多様性の相互作用を明らかにすることで、生態系と調和した農林業・緑地空間のあり方を探求しています。